"心が望むままに生きればいい"
"心が感じるままに動けばいい"
ふと、頭を過った柳先生の言葉。
「…っ」
私はー…
ふぅっと息を吐くと、校長先生を見据えた。
「…私は親に捨てられて住むところもなくして、学校も辞める寸前のところで、親から事情を聞いた柳先生が"一緒に住もう"って言ってくれました。始めは驚いたし、戸惑ったりもしました…だって、赤の他人の柳先生が…しかも先生である人がどうしてってー…」
どん底にいた私に、"一緒に住もう"って手を差し出してくれた。
「私、始めは柳先生を信じられませんでした。関わりたくないって思ってた先生でしたし、"一緒に住もう"って言ったのもあの親に何か言われたからだって」
柳先生のあの、全てを見透かしているような目が苦手だった。
「だから一緒に住む前も、一緒に住み始めたときも柳先生にたくさん酷いこと言いましたし、酷い態度もとってました。私の勝手な思い込みで、柳先生のマンションを飛び出したこともありました」
何があっても、私が悪くても、柳先生から謝る。
私はきっと今も、柳先生に迷惑をかけてる。
けどー…
「そんな私を実の親は捨てたのに、柳先生は何度も向き合ってくれました。何度も…何度も…私がいなくなっても見つけてくれて、迎えに来てくれました。蘭にも榊原にも、心配もかけて迷惑もたくさんかけて、やっと気付いたんです」
あぁ、私ってー…
「こんなに愛されていたんだなって」
きっと校長先生の前でこんなことを言ったら、誤解されるかもしれない。
けど、これが今の私の本音であり心で感じたこと。
「だからもう、自分から手を放したりしません。同じ過ちを繰り返したくないから」
そう言い切りたったのは、私がこれから心が望むままに生きていくための決心でもある。