「圭吾じゃない。柳先生だ」
「えー?圭吾は圭吾だよ」
柳先生の声が聞こえる。
「ばいばい、圭吾!また明日ね!!」
「はいはい。さようなら」
「…っ」
ここで動揺してちゃ、ダメ。
前の私は、こんなに心が揺れなかった。
「…いいよ」
前の私は、即答だった。
「そうか…ありがと。じゃ、俺は部活あるから行くわ。夜、連絡する」
「わかった」
「…櫻井やっぱ…いや何でもない。じゃーな」
何か言いたそうだった榊原だったが、何も言わず行ってしまった。
「…」
これで良かったのだろうかー…
いや、これでいい。
これでー…
「櫻井!」
ビク!
名前を呼ばれ、身体が跳ねた。