「ご…」

「ごめんな、言ってなかった俺が悪かった」

苦笑いしながら、柳先生が言った。

「や…柳先生は悪くないです!私が勝手に勘違いして…」

「いや、櫻井にだけは言っとくべきだった。変な気を遣わせたな」

「いえ…っ」

「心配しなくても、俺に恋人はいない。って宣言するのって、なんか悲しいな。俺」

「…」

「だから、何も気にせずお前は暮らせばいいよ」

「でも…」

柳先生に気を遣わせてばかりー…


「気を遣わせてるって言うけど、全然だからな」

「!」

「学校の方が色々と気を遣うし…特に保護者とか教頭とか校長とか…神経すり減るからな」

「…」

「でも最近は、学校から疲れて帰ってきて家でホッとできるんだ。手作りの夕飯がテーブルに置いてあって、しかも温かいんだ。俺の帰ってくる時間を考えて、温め直してくれてるんだなって思うと、自然と心も温かくなる」


だって、私にできるのはそれぐらいしかない。



「俺も、お前に気を遣わせてるんだな」

「そんなこと…」

「他人同士が一緒に暮らしてんだ。お互いに気も遣うもんだろ」

「…」

「お互い様だ」


ふっと笑って言った柳先生。