「とりあえずは、良かったー…」


耳元で、¨はぁー¨っと息をつく柳先生。



来ないでって言ってたくせに、柳先生の体温に触れると離れがたくなる。


ここまで走ってきてくれたのか、身体が熱い。




「…家に帰ろう?」

ポンポンっと、頭を撫でられながら言われた。


「…っ」

本当は帰りたい…帰りたいけどー…





首を振った。


「どうして?」

柳先生はさっきよりも、より優しい声で聞いてくる。




「ふっ…」





その優しさにまた涙が出る。

けど、その優しさに甘えてちゃダメなんだ。







「櫻井、言ってくれなきゃわかんないよ」

「っ…」

「どうした?何があった?」



マナを落ち着かせるように、柳先生の手は背中をさする。




「わたし…」


その行為に、自然と心が落ち着いてくる。