泣きながら話すマナを、柳先生は黙って聞いていた。
「・・・櫻井の気持ち、しっかり受け止めたから」
ぽんぽんっと背中を擦り、もう一度強く抱き締めた。
「ふっ・・・」
まだ涙は止まりそうにない。
「櫻井だけを愛してくれる人は、絶対現れるよ。大丈夫」
「ふぅ・・・っ」
「今まで寂しい思いした分、たくさん愛してもらわなきゃな」
柳先生の優しい言葉が、心に響く。
「これからは、心で感じたまま動くこと。少しぐらいワガママにならなきゃ」
「・・・はい」
「よし!じゃあ、家に帰るか」
背をぽんっと叩くのを合図に、柳先生の身体が離れた。
「・・・帰るって・・・」
「俺のマンションだよ」
「・・・柳先生が私の保護者になったから?」
「あー・・・保護者というか・・・んー・・・俺のマンションで暮らす許可を、櫻井の親御さんからいただいただけだよ」
「・・・」
「イヤか?俺と一緒に暮らすの」
「イヤとかじゃなくて・・・」
今の私には住むとこないしー・・・
ただー・・・
「北川先生が言ってたことか?」
「!?」
「あれは、気にしなくていいよ。確かに向こうが正論かもしれないが、正論だけでは生徒を守れないからな」
「・・・」
「それに、俺が教師として後悔するときは、守れる生徒を守れなかったときだから」
ぽんぽんっと頭を撫でられ、優しく微笑んだ柳先生。
ー・・・何か、今頃わかったような気がする。
柳先生の良さがー・・・
皆が騒いでる意味が少し、わかった。