最後の日なのに、涙も出ないや。


「櫻井」

「!?」

扉の前にいたはずの柳先生が、いつの間にか隣にいた。


「保健室で言ったよな?頭で考えずに、心で動けって」

「・・・」

「今、ここで死ぬことがお前が心で望んでいることなのか?」

「!」

柳先生の手が頬に触れた。

「触らないで・・・」

触れている手を離そうとしても、離れない。

「本当に心から望んでいるのは、愛されることじゃないのか?」

「・・・っ」

ドクン。

「こうやって人の体温を・・・温かさを感じたいんじゃないか?」


ドクン。


「櫻井、どうなんだ?」

ドクン。

ドクン。


「・・・っ」



さっきまで ゙無 ゙だった心に、血が通い始める。