目の前の家とその表札を交互に見比べる。


「香…月……って…」


な、なんで悠真の家…!?


たしかに悠真のことは考えていたけども……それを鈴に口にはしていなかったから。


なんで鈴がここに来たのかがよくわからず、呆然と立ち尽くしていると。


鈴はくるっとこちらを振り返って、いたずらっぽく言った。


「あー、鈴用事思い出しちゃったぁー。お姉ちゃん、よろしく言っておいてネー。」


それは、ものすごく、棒読みで。


そんなに鋭い方じゃないあたしでも、鈴がねらってこの状態にしたことくらいわかった。


でもなんで……


よく分からないという風に鈴を見つめると、鈴はにっと笑って言ったんだ。


「お姉ちゃんに笑顔がないと、調子狂っちゃうんだよねっ」


そのままひらひら~っと手をふりながら家へと帰っていく鈴。


その背中はいつもよりほんの少し、大きく見えた気がした。