…っと、今はそれどころじゃなくて。


あたしはゆっくりと瞬きを繰り返している鈴のほうに体を向けた。


「ね、ねぇー…鈴?なんであたしの部屋に、この人がいるか知ってる?昨日、なんかあったっけ?」


「ほぇ?お姉ちゃん、昨日のこと覚えてないのー?」


「んーっと…お、覚えてない」


えぇ~と口を尖らせながら黒い瞳をくるんとする鈴。


それは、あたしに呆れたときにする鈴のくせだ。


「あたしたち昨日、映画のDVD借りてきたから見よー!…って、誘われたんだよっ?」


「そーだったんだぁ?……って、誰に?」


「お姉ちゃんに決まってるでしょっ」


「はっ、はい!そうだよね、ごめんっ」


そんなこと、……あったのかも。全然記憶にない…。


布団からのそりと立ち上がって、ただ苦笑いを繰り出すほかなかった。


「それでね?……ご、ごめんってお姉ちゃん!そんなに落ち込まないでっ」


「う、うん…」


よほど力なく笑っていたのだろうか。


落ち込んでいることを指摘され、眉を下げる。


情けないです…はい。