「ははっ、背ぇくらいでムキになんなよな!」

「むーっ!だって…」


あたしはぷくっと頬を膨らませながら、鈴を見る。


「鈴にも抜かされちゃっ……た、し」


鈴は首を傾けながら、静かに笑っていた。


その笑顔は、少し寂しそうに見えて…


胸がきゅうっと締め付けられる。


妹なのに。家族なのに。


たまに、鈴の考えていることが分かんなくなる。


鈴を、すごく遠く感じるときがある。


そうなると、あたしにはどうすることもできなくって。


あたしはぐっと押し黙る。


いつのまにかあたしたちの部屋は、しん…と寂しい雰囲気になってしまっていた。




苦しい沈黙を破ったのは、あたしでも鈴でも、悠真でもなかった。


「そろそろ降りてきなさーい?ごはん冷めちゃうわよー」

「あ、はーい!すぐ降りてくね」

「おばさん、俺の分も用意してくれてんのかな」

「そりゃあ、あるんじゃなーい?」

「っしゃ!」


悠真と楽しそうに笑っている辺り、鈴はいつもの明るさを取り戻したようで安心する。


お母さんの間延びした声によって、あたしたちは明るい空気に戻りつつあった。