家族で旅行に行ったとか、プールに行ったとか。


そんな萌の夏休みエピソードにあいづちをうちながら、教室へ向かう。


話している様子からも、話の内容からも、夏休みを十分に満喫したことが伝わってきた。


いいなぁ…なんて。


「ね、そう思うでしょ?」


「へっ?う、うん?」


話をきちんと聞いていなかったことを悟られないよう、へらっと笑ってみせる。


しかし、それが逆効果だったのか。


萌が不満げな視線を送ってきた。


「つまんない話ですみませんねぇ。じゃー、柚の話をしてよぉ。どうだったの?悠真と」


「……」


そ、れは……


きゅうっと両手を握りしめて、立ち止まる。


先を歩いていた萌はあたしが隣にいなくなったことにすぐに気づいて引き返してきた。


そして、あたしの暗い顔を見て、察してくれたようだった。