目の前の墓地。
その石碑に"沖田 楓"って彫られてるのが、いまだに信じられなくて。
「音ちゃん!」
私を呼ぶ楓の声が心に響く。
オーストリアに戻る気力がないから、そこにいる先生に事情を話して、落ち着いたら戻ることにした。
それまで、前通った高校にじばらく戻るというわけだ。
それに、私だって悲しいけど
和樹の方がよっぽど傷心だ。
だって、あの日以来、和樹がサッカーで上手く行かなくなって部活を休部した。
しかも、和樹は楓の死でしばらく学校にさえ行ってなかったのだから。
楓に花を置いて、私は手を合わせて祈った。
「大丈夫だよ、もう音ちゃんは孤独じゃないよ。私たちがいるよ」
死ぬ間際に私に残してくれた言葉。
私はその言葉を聞いて、立ち直れた。
お母さんも仲直り出来た。
ありがとう、楓。