予選突破の当選者発表は午後7時。
まだまだ時間があるもんだからお母さんと近くのカフェに訪れた。
「突然でごめんね……。ちょっと話したくて」
「ううん、大丈夫」
お母さんはコーヒーをひと口飲んでから
「本当に今までごめんなさい!」
お母さんが頭を下げる。
「……顔あげて」
お母さんは驚いたように、顔をあげて私をみた。
「確かに忽然とお父さんが亡くなったのはショックだったと思うよ。でも辛かった。
ピアノだって諦めかけたのはお母さんが原因だし」
お母さんが青ざめても私は言い続ける。
「一時期感情だって分かんなくなった。笑うことだってお母さんからの愛情がないからだってすぐに気付いた。けどね、その時助けてくれたのが和樹なんだ」