「私のこと、音羽って呼んでよ。
私も呼ぶから……有澄奈!」
名字でさん付けとかって他人行儀みたいじゃん?
だから下の名前で呼びたかったんだ。
それに、もう仲良いから呼んでほしいし。
「そうね、いず……いや音羽!
コンクールはライバルだけど健闘を祈るわ」
氷室さん、じゃなくて有澄奈は笑ってエールを送ってくれた。
「そっちこそ頑張ってね!!」
寮で話すことはしばしばあったが、なんせコンクール1週間前。
学校ではあまり話すことがなかった。
死に物狂いでラ・カンパネラを懸命に練習し続け、ついに本番を迎えた。
今日は1次予選。
その後第2予選もあって本戦の出場権を獲得出来る。
今回は有澄奈がいるし、世界規模のコンクールだ。
目標は1次予選突破出来たらいいな……なんて考える。
私の出番はまだまだだからぶらぶら歩いていたら、私が密かに待ち望んだ時がついに来たのだった。