「音羽は宿題終わった?」
「……うん、まぁ、ね……」
そうは言っても、実は全くやってない。
担任の先生にドイツ語の勉強頑張りなって言われ、大目に見てくれたのだ。
先生には、留学することは自分から話すからと言って、言わないでくれたから、あの時話した白坂以外はみんな知らない。
和樹には今会えたから、ここで言うつもり。
「いいなー。俺バカだから今から楓のところに行って教えてもらうよ」
「へぇー……いいじゃん。楽しんで」
なんか無意識で声が低くなってしまう。
それって、デートだ。
いいなー。羨ましいなー。
……あっ、いけない、いけない。
そんなこと思っちゃいけないのに……。
「音羽?」