「でも……」

まだうつむく桜に、シュリは笑ってみせる。

「あのな桜、本当いうと俺は正直、王都武官になって良かったか分からなかったんだよ」

「え?」

「王都武官っつーのは、王宮付だったり、近衛になるのが目標なんだが………どーも宮中は俺に合わなくてな」

「…………」

「だから、却って良かったかもしれねえよ。俺は外で好きにするのが性に合ってる」

すると顔を上げ、まだ潤む瞳でまばたきする桜。
笑顔を小さくして、すこし静かに呟いた。

「…………お前に会えなくなるのは……辛いけどな。罰だ、仕方ねえよ」

夕陽に照らされ、少し顔を伏せてたたずむシュリ。

ぐっ、と桜は一度唇を結んだ。

会えないなんてことない。きっとまた会える。生きてるなら。

「シュリさん。絶対また会えます」

「?」

はっきりとした桜の声に、少し不思議そうな顔をする。

「お二人には言ってなかったんですけど……私ね、乗馬を習おうと思ってるんです」

「ああっ?!」
「お前が!?」

驚愕して、二人は同時に声を上げた。
桜はうなずく。

「ええ、王様にもお許しもらったし、シディさんに乗馬服作ってもらいました。きっと、お二人みたいに上手に馬に乗れるようになってみせます」