王の温情か、シュリは縄で縛られることなく連れて来られた。

しかし、その脇は二人の近衛がピタリとはりついている。

静かな表情でシュリはひざまずいた。

「シュリ」

「はい」

「此度の事、何か申し開きがあるなら言うがよい」

王は無表情だ。小さく耳飾りだけが音を立てる。

シュリは目を閉じた。

「いいえ、何もございません。恐れ多くも我が君の客人を、私情をもってかどわかし、結果として、客人を命の危険にさらしました。どうか、厳正なるお裁きを下さいますよう」

そのまま深く、頭を下げた。

「相わかった。その潔さや良し」

一つうなずいて、文官に何事かささやくと、さっと小脇に抱えていた書類を差し出す。

沈黙が降り、王がそのページをめくる音だけが部屋に聞こえた。

しばらくして、バサッと無造作にそれらを閉じた彼は、文官に返しながらこめかみに指を当てた。
眉間にシワを寄せ、紫の目を伏せている。

「……………」

しばらくそのままの姿勢で考え込んでいたが。

ふっとその手を下ろし、口を開いた。

「では、シュリ。処分を言い渡す」

「はい」

はっきりと返事をし、王の紫の目を真っ直ぐ見つめた。