こんなに寒いのに、彼女は毛布すら被っていない。ねぇ、誰でもいい、彼女に毛布をかけてあげて。僕にはそれが出来ないから。

 ねぇ、お願い。早くしないと、またほたるが熱を出してしまう。


――僕の願は誰にも届かなかった。ほたるはそのまま朝まで目を覚まさなかった。体中が震えていた。いつもより早く、身体を起こした。きっと、寒くて目が覚めたのだろう。


 体を起こした彼女は、おもむろにパジャマを脱ぎ始めた。そして、クローゼットの中から、クリーニングの袋に入ったままのワンピースを取り出した。

 この季節には似つかわしくない、薄手の白いワンピース。どうして、こんなに薄い服を着るの? ほたる、風邪引いちゃうよ。せめてカーディガンを羽織ったらどう?


 彼女はワンピースの上に何も着ようとはしなかった。