その日、母さんは真理子叔母さんに付き添って真理子叔母さんの家へと帰り俺はサナを連れて自宅に戻った。

タクシーの中でサナは黙って窓の外を見ていた。

『えっと、サナだっけ? 俺のことって知ってる・・・わけないか。 従兄妹の康介だよ。コウって呼んでな。』

そう声をかけるもサナは窓から目をそらさず黙り込んだまま。
小さな手はキャップ帽を強く握りしめていた。まるでなにかを必死にこらえるかのように。


真黒な髪の毛は襟足が長くトップの部分が立たせてあり俗にいうウルフカットと呼ばれるスタイルで小柄な彼女にその髪型は狼の子供を連想させる。
ルイとはまた違った脆さを感じた。ふとした瞬間に崩れ去ってしまうような。

『サナって中3だよな? 学校は・・・明日行けるか? 無理そうなら俺から連絡しておくから。』


『学校は行ってない。』


やっと彼女が口をきいてくれたと思ったらまさかの学校には通っていないということだった。

『いつから行ってないんだ?』

『ルイの病気がひどくなってからずっとそばにいたから行ってない。』


ルイの病気がひどくなったのは一昨年の夏ごろだったはず。
ほぼ通っていなかったということか。