バイトを終え、一紀と二人で『スタジオふわり』を出た。いつも店の前で待っているはずの雄太郎さんの車に近づくと、その運転席には見慣れない姿があった。
 


「美由紀さん……」
 


「やっほー。雄太郎がね、仕事の接待が入ったから迎えに来れないっていうから、私が代わりに来たの」
 


美由紀さんは、助手席の窓を開けいつもと変わらない笑顔で私に話しかけた。
 


「あれ?一紀は何でいるの?」
 


「俺、ここの娘さんの家庭教師やってるんだよ」
 


「へえ、知らなかった」
 


「誰かさんがなかなか帰ってこないからだろ」
 


「ごめんごめん。雄太郎と二人でまた研究することになって。色々話してたの」
 


「ふうん……」
 


一紀は、当たり前のように車の後ろのドアを開け、車に乗り込んだ。
 


「何であんたまで乗るのよ。家近いんだからあんたは歩いて帰りなさいよ」
 


「やだ。夜道怖いし、お姉ちゃんと久しぶりに話したいもん!俺、久しぶりに雄太郎さんちに泊まる!」
 


「何かわいこぶってるの?雄太郎は、今家にいないんだよ?聞いてもいないのに、そんなのダメに決まってるじゃん」