「私、なんで記憶無くしたんだろう?」
「火事のことがショックだったからじゃないの?」
「そう、聞いていたけど、実際に部屋に飾られていた両親の写真は雄太郎さんの両親だったし、私の母親は生きてるって……だから、記憶をなくした原因って、本当に火事だったのかな、って……」
立ち止まった私の体を包み込むようにして、一紀が後ろから私の肩を抱いた。
「何も分からないって、怖いよな」
「……」
「とりあえず拓の話からだけだと、優花は突然失踪したことになってる」
「うん……」
一紀に抱かれた肩があったかくて、涙が流れてきた。
「この前の海の時もそうだけどさ、俺はもう優花が突然どっか行くとか勘弁だから。だから、雄太郎さんに頼れないんだったら俺のこと頼ってよ。名探偵だし」
「っふ……名探偵引っ張りすぎだし」
流れた涙が急に引っ込んで、変わりに笑いが漏れた。