私は一睡もできないまま朝を迎えた。
 


「大丈夫?目にくまができてるよ。朝ごはん食べれそう?」
 


「……食欲ないかも……」
 


「じゃあ、お母さんにおにぎり作ってもらうから。それまで私の部屋で休んでて。顔洗いたいなら、このタオル使ってね。私の部屋出たすぐ横の洗面台使っていいから」
 


菜子がこんなに気を遣ったところをあまり見たことがなかったから、てきぱき動いてるのがすごく意外だった。

もしかして、私が今日も『ボロボロ』なのを感じて、必死に考えて動いているのかもしれないと思った。
 


「なんだかいつもと立場が逆になった感じ」
 


菜子が部屋から出て行くときににやっと笑って得意げな顔をした。

菜子も同じことを感じていたらしい。
 

菜子が出て行ってから、部屋の窓を開け早朝の空気を吸い込んだ。

夏らしい湿気のある空気でちょっぴりだけ、もあっとしたけれど、それでも考え事をしすぐてぼんやりした頭を目覚めさせるには良かった。


のろのろと着替えをして、七分丈の白いワイドラインのパンツと白いシャツを羽織った。

今日はたくさん移動するし、暑くなるだろうから、できるだけ涼しい服装を選んだ。
 

菜子が貸してくれたたくさんの星模様がプリントされたフェイスタオルを持ち、部屋のすぐ横にある洗面台で顔を洗うと、もっとすっきりした。
 


身支度を整えて、菜子の部屋のベッドに腰をかけて座っていると、スマホに着信が入った。


一紀からだった。