「あ……一紀ならたぶん、名探偵かよってツッコんでたね」
 


ワンテンポ遅い菜子の考え抜いた答えに、緊張の糸が切れ、私は声をだして大笑いしてしまった。
 


「そんなに笑わないでよ……」
 


「だって、菜子、ふふっ、真剣に考えすぎだって」
 


「いやいや真剣になるでしょ!優花にしてあげられること何かなって、私……優花が病院で目を覚ました時からずっと、そればっかり考えてるんだよ」
 


「そうなの?」
 


「そうだよ!いつも何があってもクールな感じで切り抜けちゃう優花がさ、あんなに取り乱して、ボロボロで優花じゃないみたいになっちゃって……」
 


[そんなにボロボロだったかな?]
 


「見る影もなしだよ!優花が元気じゃないと、なんだか私まで元気なくなってくる感じがするんだよ」
 


「そっか……ごめん」
 


「いや、優花のせいじゃないじゃん!てかさ、私思うんだ。なんで優花のせいじゃないことでこんなにも優花が苦しまなきゃならないのかってさ。だから、私にとってはみんな悪者なんだよね。優花が苦しむのは間違ってる!」
 


そこまで力強く言い切る菜子の姿がすごく嬉しくて、自然と笑顔になれた。
 


「ねえ、これから一緒にクッキー作らない?」
 


「え?何でいきなりクッキー?」
 


「今日作る予定だったんだよね。明日の旅のお供にと思って。一緒に作ろうよ。考えるのはいったんストップしてさ。楽しいことしようよ」