「記憶を取り戻そうとするのだけはやめて。もし、優花ちゃんの記憶が戻れば、雄太郎も傷つく」
 


「……私は……雄太郎さんと私が過去にどういう関係だったのか、知りたいんです」
 


「感情的になって、本音が出てきたね。それは優花ちゃんの思いでしょ?雄太郎も私も……それは望んでない。自分勝手なんじゃないかな?」
 


自分勝手?今こうしているのって自分勝手なことなの?

私は美由紀さんの言葉にショックを受けた。

その反面美由紀さんは、冷静な表情でコーヒーを淹れている。
 


「優花ちゃん、雄太郎のこと好きでしょ?」
 


「何言ってるんですか?好き、なわけ……」
 


「ううん。好きなんだよ。だから、過去の雄太郎とのことを知りたくてたまらないんだよ」
 


「じ……自分のこと知りたいって……思ったらいけないんですか?」
 


「……今幸せなんだからいいじゃない」
 


美由紀さんはコーヒーを淹れ終わり、『もう話しても無駄』と言わんばかりに大きなため息をついて、雄太郎さんの部屋に戻って行ってしまった。