「あのさ……」
 


一紀はあたりを気にしながら、そっと私にその画面を見せた。
 


「拓、優花のお母さんに会いに行ったみたいなんだけど、出かけてるみたいで家何日も開けてるんだって」
 


「そうなんだ」
 


「それと、特に学校で優花に会う分には、何も悩んでいるような感じはしなかったって。ただ、高校が拓と別々だったみたいで、高校に入ってからのことは分からないって」
 


「高校で何かあったのかな?」
 


「うん。そのあたりは、優花の本当のお母さんが知ってそうだよね」
 


「待つしかないか……」
 


その時、玄関の扉が開いて、「ただいま」と雄太郎さんの声が聞こえた。

一紀は出していたスマホを慌ててズボンのポケットにしまうと「おかえりなさい」と言って雄太郎さんに駆け寄った。
 


「あれ?一紀君、いたの?」
 


「お邪魔してます。久しぶりにゲームしたいと思って来ちゃいました!」
 


「お。いいね、やろうやろう」
 


そして一紀の後ろから顔をのぞかせた私に、いつも通り「ただいま」と優しく微笑んだ。
 


「……おかえり」
 


「うん。俺ら先にゲームしてるから。優花は先にお風呂入っちゃって」
 


「分かった」
 


「おし!行きましょ」
 


一紀は雄太郎さんの背中を押して、雄太郎さんの部屋がある二階にぐいぐいと連れて行った。