「……別にいいですよ、私は」
 


私は、一紀の後から一緒に後ろの座席に座り車の後ろのドアを勢いよく閉めた。


私はイライラしていた。

なんで家族でもないのに泊まっちゃダメだということを美由紀さんに決められなければいけないのだ。

私の家だ。

私が決める方が筋が通っている。
 

美由紀さんは、びっくりしたように私を見たけれど、何も言い返すことなく車を発進させた。
 


「家主がいいって言ってるんだから、オッケーだな」
 


「……うっさい……」
 


美由紀さんは、明らかに機嫌が悪くなったようで捨てるように呟いた。
 

一紀はそれを見て美由紀さんに見えないように、私にちっちゃくブイサインを送って見せた。
 

美由紀さんは、それから何も言葉を発することなく家まで車を走らせた。

美由紀さんは車を私の家の前に停めると、さっさと雄太郎さんの部屋へと行ってしまった。
 


「車の中、すげえ居心地悪かったな……それよりごめんな。急に泊まることにして。姉ちゃんと優花が二人きりで家にいるの考えたら、優花きっついかなあと思って。半ば無理やりあがりこんだ感じだけど……迷惑じゃなかった?」
 


一紀がリビングのソファーに腰掛けながらネクタイを緩めて、ふうとため息をついた。
 


「やっぱりそうだったんだ。一紀、気使ってるかもって思ってたから。むしろ助かったよ。……美由紀さん、怒ってたよね?」