浮気。頭蓋さんが。


いや、でも私たちは付き合っているわけじゃない。それに頭蓋さんのことが好きなわけでもないし。



「あ、二人手振ってる。頭蓋さんこっち来るんじゃねーか?」



すっごい笑顔だ二人とも。


どうやらここで別れるようだ。数秒手を振ったあとに、頭蓋さんは菓の言うとおり、私たちの方へ何食わぬ顔でやってくる。


時計塔の方を見て恐らく時間を確認し、ゆっくり前を見たーー今、絶対に私と目が合った。


途端に彼の目はこれでもかというくらいに鋭くなり、私の肩に手を置く菓を睨みつけた。むうぅって効果音が付きそうだ。



「ちわー、あんたが頭蓋さんでしょ?」



そんな頭蓋さんに一発仕向ける菓。



「……君は?」

「俺は菓っていう孤独なやつ」

「……?」



間違っていない。間違ってはいないが、今ここで言ってもわかる奴は私しかいないだろう。


つまり彼は、友達がいませんと中二病っぽくアピールしているただの阿呆だ。



「綾から離れてよ」



そして頭蓋さんの声音はいつかのようにーーというかいつもの嫉妬のように恐いもので、でも今日は少し焦りも入っていた。


あーあ、頭蓋さんはこうなると機嫌直すのが面倒だ。


……ん?