二次会へは行かず、私は早めに自分の家に帰った。「まだいなよ」と親にも姉にも引き留められたのだけれど、早くゆっくりしたかった。
ガタンガタン、揺れる窓からのぞく外はすっかり真っ暗。うとうと寝そうになりながら、私は電車を降りた。
いつもの道。
明日からもいつもの道―――
「倫子。」
でも今日は違ったみたい。
いつもの道に、いるはずのない人。
いつぶりか分からない程、でも、私がずっとずっと会いたかった人……
「嘘!うそ、うそ、なんで………。」
言葉を失った私は、その場に立ち尽くす。
「えっと、倫子、ごめん。驚かせちゃって……。」
彼はゆっくり近づいてくる。
「今出張中で、こっちの会社にまた来てて……来週いっぱいまでこっちいてさ。
式の後だし、家帰るとか分からなかったんだけど、まぁいるかなって……。」
「直人、えっと、えっと。」
彼が話していることは理解できるのだけれど、あまりのことに思考が追い付かない。
言葉がでない。
目の前に彼がいる。
手を少し伸ばしたら、触れる距離に彼が。
「…えっと、歩きながら話そうか。
帰宅中だよね…?」
私はうなずく。
「よし、えっと、じゃあそれ持つよ。」
そういって彼は私が右手に提げていた、今日式で来ていたドレスが入ったカバンを手に取った。