呆れたようにため息をつくワンリーに、メイファンはひとつ提案する。

「あの、ワンリー様は元の牢に戻っていただけませんか?」
「どういうことだ?」

 ワンリーは訝しげに眉をひそめた。メイファンは続けて昼間ガーランの言っていたことを説明する。

「確実にうまくいくかどうかはわからないんですけど、帝の側近だという方に事情を説明しました。その方が取り調べの人に伝えて下さるそうです。もしかしたら、ワンリー様は釈放されるかもしれません」
「そうか。そういうことなら、少し様子を見てみるか」
「ありがとうございます」

 ワンリーが納得してくれたようで、メイファンはホッと息をつく。するとワンリーの腕がメイファンをふわりと抱きしめた。

「俺のために骨を折ってくれてすまない」
「いいえ。いつも私はワンリー様に助けられています。私もワンリー様を助けたくて……」

 メイファンの言葉に、ワンリーはクスリと笑って耳元で囁く。

「かわいいな」

 そして頬に軽く口づけたあと、抱きしめる腕に力を込めた。耳や頬に触れた吐息にドキドキしながらも、メイファンは力強い腕の温もりに安心して身を委ねる。少しして腕を緩めたワンリーはメイファンのあごに手を添えて上向かせた。少し意地悪な色をたたえた瞳がメイファンを見つめる。

「またおまえと離れるのは寂しいな。おまえもそうだろう? 俺から離れていると俺のことばかり考えるほど俺に惹かれているのだろう?」

 いつものように自信満々で断言されて、ドキリと鼓動がはねた。けれど図星には違いない。いつの間にかメイファンの中で、ワンリーがなくてはならない存在になっていた。
 メイファンは微笑んで小さく頷く。

「はい。そうだと思います」
「ようやく気付いたか」

 嬉しそうに笑ったワンリーの顔が徐々に近づいてくる。メイファンは静かに目を閉じた。