微笑んで目を細めたとき、目の端から涙がこぼれて頬を伝った。それを見てワンリーが焦ったように顔をのぞき込む。

「どうした? なぜ泣く? なにか酷い目にあったのか?」
「いいえ。客人のように扱われています。ごめんなさい。ホッとして気が緩んだみたいです」

 笑いながら指先で涙を拭うメイファンを、ワンリーが抱きしめた。

「すまなかった。そんなに心配をしていたのか。もっと早く来ればよかったな」
「もう大丈夫です。ワンリー様は大丈夫ですか? なにか酷いことされたりしませんでしたか?」
「いや。牢に入れられていただけだ」
「そうなんですか?」

 不思議に思ってメイファンはワンリーを見上げる。捕まってからずいぶんと時間が経っている。少しくらいは取り調べが行われていると思っていたのだ。
 ワンリーは腕をほどき、メイファンの手を握る。そして庵の出入り口に向かった。

「話はあとにしよう。ここを出るぞ。姿を消すから少しの間黙っていろ」
「待ってください」

 立ち止まったメイファンの腕に引かれて、ワンリーも立ち止まる。怪訝な表情で振り返ったワンリーにメイファンは告げた。

「私が黙ってここから姿を消したら、シェンリュがお咎めを受けてしまいます」
「なるほど。それはまずいな」

 ワンリーは少し考え込んだあと、名案を思いついたように目を輝かせる。

「途中まで同行してもらうというのはどうだ? 頃合いを見てひとりで帰ってもらうんだ。一緒に連れ去られたならお咎めはないだろう」

 それを聞いて、メイファンは申し訳なさそうに苦笑した。いい考えのようだが、おそらくお咎めは免れない。

「たぶんダメだと思います。ひとりで帰っては、シェンリュが私を放ってひとりだけ逃げてきたと思われます」
「人というのは疑り深いものなんだな」