「ご機嫌を損ねてしまったようですね。あなたが愛らしいのは事実ですが、それはこの際置いておきましょう。重要なのはあなたが女性であるということです」
「どういうことですか?」

 思わず視線を戻したメイファンに、ガーランは安心したように微笑んだ。

「聖獣殿を封鎖している術師が男だからです。宮廷の術師が目撃しています。あいにく取り逃がしてしまったのですが」
「そうですか」

 ようやく自分が牢に収容されない理由がわかった。けれどワンリーにとってはとんでもない濡れ衣だ。
 メイファンはすぐさま釈明をする。

「私たちはビャクレンから所用で来ました。さっきテンセイに着いたばかりです。聖獣殿にはお参りをしようと思って行きました。勝手に立ち入ったのは悪かったと思いますが、決して太子様を脅かそうとしたわけではありません」
 必死に訴えるメイファンに、ガーランはにっこりと微笑んだ。

「わかりました。取り調べの者に伝えておきましょう」

 そう言ってガーランは回廊から池の上にせり出した庵を指さす。

「お連れの方の取り調べが終わるまで、あなたにはあちらにいてもらいます。牢ではありませんが、自由に出歩くことはご遠慮願います。侍女をつけますので、生活の不自由はないように配慮しましょう」
「わかりました」

 侍女といっても監視役だろう。牢には収容されないとしてもメイファンも一応罪人扱いには違いない。
 庵の前までメイファンを案内したガーランは、メイファンの頬に軽く手を添えて微笑んだ。

「少しの辛抱です。あなたのような愛らしい人が罪人であるはずがないと私は信じています」
「あ、ありがとうございます」