姫川さんと初めて会った日は怖さと
混乱しかなかった。


「君、早川桜さん?」


学校からの帰り道、突然呼び止められた。


「……」


答えずに見つめていると姫川さんは
名刺を差し出した。


「…警視庁…?」


「まぁ仕事はあんまり関係ないけど」


低くて良く通る声で答えると


「俺は君の兄なんだ」


私を真っ直ぐに見つめて、そう言った。


「兄?」

全く理解できなかった。

家は母一人、子一人でずっと過ごしていたから。


私の次の言葉を待たずに姫川さんは

「母親は違うけどね」


少し悲しそうに呟いた。