それから毎日の様に、考えていた。
あの人に会う事は普通の父親と会うのとは少し違う気がしていたし、正直なところ現実味が無かった。

「今日ね患者さんから頂いたの」

お母さんが私が子供の頃から好きな駅前のケーキ屋さんの焼き菓子を出した。

お母さんが仕事で忙しい時、留守番や家の手伝いをすると買ってくれたご褒美的なものだった。

今でも時々、思い出した様に買って来てくれる。

「やった!結構久々かも」

「紅茶入れるね」

「お母さん」

「ん?コーヒーにする?」

「あのさ、姫川さんが…えっと、お父さんの方の...」

「亨一郎さん?」

「うん。会いたいって言われてて...」

「迷ってる?」

「会って何話せばいいのかな。だって父親って言っても初めましてでしょ?」

「初めましてじゃないよ」

お母さんはニコリと笑うと

「ちょっと待ってて」

立ち上がって自分の部屋へ入って行った。