玄関を開けると夕食の準備をしているのか
カレーの匂いがした。

「おかえりー」

お母さんの声がキッチンから聞こえてくる。


ノロノロと靴を脱いで家の中に入る。

「ただいま」

「もうすぐ御飯できるけど、すぐ食べる?」

お母さんは普段通りの笑顔で言った。


「……」

黙ったままの私にカレーの鍋を混ぜていたお母さんは

「どした?具合でも悪いの?」

私をじっと見つめている。


「桜?」

「…姫川さんって人に会った…」

お母さんの顔から笑顔が消えていた。