「…華王様」

 白磁に背を向けた灰梅が頭を下げた。

 「恋人の無礼をお許しください。そしてお声を聴かせてくださいませんか?」

 目を細めた朽葉に、歌謡いが腕を組んで間に割って入った。

 「頭を下げるならもっと地面に近くないとね~?」

 試すような言葉に灰梅が膝を折った。

 「灰梅!そんなことしちゃだめだ!」

 慌てる白磁の声を聴かず、地面に膝をついた灰梅が頭を下げた。

 「どうか。お声かけください」

 目上の者に対してのその行為は決して屈辱的とは捉えられない。

 それは、白磁にとっては別であった。

 「…黄橡(きつるばみ)」

 「はにゃ~、王ごめんなさい~。ちょっといじめただけなの~」

 振り返る黄橡の甘えた声に朽葉に抱かれている華王が口を開いた。

 「会いたかった…よく生きていた」

 相当な数が命を絶たれた。

 それはこの旅の難しさで実感していた。

 同族に出会うなど稀なんだ、それほどに数が減っている。

 だからこその声掛けだった。

 涙が出そうになった、だから灰梅は顔を上げられなかった。

 堪らなかったのは、白磁だった。