用を聞かなくてもわかったのは、白い女の目が同族であると告げていたから。

 「御目通しを!華王さま」

 震えるその声は、この日を夢にまでみていた。

 歌謡いは帽子を取りながら立ち上がり、女の目をのぞき込んだ。

 「むむ、何奴。怪しい奴め」

 「ふざけるな」

 踊り子を腕に抱いた男が歌謡いを嗜めれば、不機嫌に歌謡いが眉を顰めた。

 「…灰梅(はいうめ)と申します。お会い出来る日を夢みておりました!」

 歓喜の声を上げる灰梅は、突如その身体ごと後ろに引かれた。

 身構える間もないことに、歌謡いが蔑みの声を上げた。

 「っは!無礼な奴!」

 「…灰梅、こんな奴らと口聞くことないよ」

 突如現れた釣り目の男は嫌がる灰梅を後ろ背に隠し、三人を睨んだ。

 白い目をした男に同族とわかるも、その雰囲気は友好的ととても言えない。

 「…貴様、この方が華王様とわかっての言動か」

 「わかってるさ。嫌でも香る」

 耳を塞いでも聞こえる鈴の音と、漂う甘い香り。

 三メートルもないこの距離では歓喜に涙を流しても良い程焦がれた香りだった。

 「白磁(はくじ)、やめて」

 灰梅の制止も聞かず、白磁と呼ばれた男は強引に彼女の腕を引いた。

 「行こう。二度と近づいちゃだめだよ」

 やさしい口調でも彼が怒っていることはわかった。

 それでも灰梅が抵抗したのは、華王にあえたからだった。

 「…待って。白磁私」

 「待てない。恨み言なら後でいくらでも聞くよ。さあ、行こう」

 振り返らず灰梅を引きずるようにして歩く白磁の腕を彼女は無理やり振り払った。