リンリンーと鈴の音が響く。
歩を進める度に強くなる甘い香りに誘われて、期待と不安が入り混じる。
それは、決して他種族にはわからぬ音と香り。
近づけば聞こえる胸を打つ響く鈴の音と、目がくらむ程の甘い香り。
華族は、様々な分野に優れ、風を読み、水を操る等特殊な能力を持つ者が多く、その声は傷を癒す力もあるとされ、他種族には忌み恐れられてきた。
他種族からの攻撃や利用から、華族の王、華王は身を隠してからは本格的な華族狩りが行われ、今ではその姿を見る者はいない。
だが、今もどこかで、甘い香りに誘われて、見目美しい白い目をした華族が華王を探しているという。
それは、決しておとぎ話や噂話なんかではない。