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『お嬢様、起きていらっしゃいますか』



ドアの向こうから声がしてふと意識が現実に戻ってくる。



『…ん』


『申し訳ありません。起こしてしまいましたか』



執事のその言葉に私はベッドの上から首を横に振る。



『大丈夫よ。うとうとしていただけだから』



まだ眠りにまでは辿り着いていなかった私の言葉に執事は眉間にしわを寄せた。



『うとうとしていたということはあなたの場合お疲れになっている証拠です。少しお眠りになってください』



そう言ってぼふんと布団を私にかける彼に思わず笑ってしまう。

私は家の人間にとても恵まれているようです。



『それでは、少しだけ』



少しだけ、この世界から逃がしてくださいな。


そう思って彼にそう告げれば彼は子どもを寝かしつけるように私の頭を撫でた。

その心地よさに私はすっと眠りに入る。



『おやすみなさい、お嬢様。よい夢を』