「眠り」が増えていったのと同時に増えていったものがあります。
それは「不安」と「恐怖」でした。
それは心のなかに根を張って、どんどん成長していき、大きな木になりました。
最初は何かに対してだったそれも、いつのまにかその存在が大きく残ってしまったのです。
その木は何か小さな引っ掛かりを見つけると、まるで台風が襲っているかのように大きく枝を唸らせてざわざわと揺れるのです。
心の中心に大きく育ったそれを取り除くのはとても難しい。
だって私はそんな専門技術もっていませんもの。
だから私は「眠る」のです。
目が覚めたときに、少しでもその枝が静かに揺れていることを願って。
少しでもその木が小さくなっていることを祈って。
ゆっくりと目を閉じるのです。
明日は大丈夫。次は大丈夫。
優しい風が吹いているはず、と。
何度も同じことを呪文のように唱えては「眠って」世界から切り離されていくのです。