「えっと……失礼します」
撮影機材をいれて膨らんだ鞄が置かれていたソファーへと己も腰を下ろすと、また沈黙が部屋を埋める。
先ほどとは違って父親はずっと俺を見ているけれど沈黙自体は先ほどと変わらなくずっと重たいままだった。
「……君は娘のことを取材しにきたのかね?」
ようやく聞かれた問いは予想外のもので、目を少し見開きつつも否定の意味を込めて首を横にふる。
「いや……その、島民さんからここの家の人の話を聞くべきだと勧められて、簡単な取材でもできたらなぁと思ってきただけなんです。」
自分でもこんな不順な動機で来たということがいまさらながら恥ずかしいというか来るんじゃなかった、なんて後悔をしてしまいそう。
俺をじっと見てくる父親の目線にかえすように俺もじっと見つめると父親は少し困ったように眉を寄せ、吐息を吐いた。