「名前、初めて呼ばれた」
そう言われて、私まで顔が熱くなる。
(そうだったけ!?いや、そうかも…そうだよ)
「ちょっと2人で遊んでろ」
高遠くんは相川くんと桜井くんにそう指示すると、私の腕を掴んで体育館の外に向かった。
「高遠くん!?」
無言で早足で歩く高遠くんに引っ張られて、私は小走りになる。
校舎の裏手まで連れてこられて、壁に背中を付けた高遠くんに更に腕を引っ張られて抱きしめられる。
(なになになにっ!?)
どうしたの?
どうしちゃったの?
「先輩に名前で呼ばれる破壊力ハンパない」
高遠くんが私の肩に顔をうずめた。
その体勢になって数秒後、顔を上げた高遠くんが
「先輩、俺のこと名前で呼んで」
切なそうな顔で私を見た。
「お願い、先輩。じゃないと俺、気持ち抑えらんない」
どういうこと?
気持ち抑えるって?
でも急に名前で呼んでって言われても、恥ずかしいよ。
1つ大きく深呼吸して
「翔…くん」
って呼んだ。