「一也、そこまでな」

高遠くんの言い方は優しい。


「でも…!」

言いかけて、桜井君はぐっと唇を噛んだ。

「…翔先輩、すいません。先輩方も…本当にすいません」

そして、コートにいるみんなに頭を下げた。



「桜井くんが謝ることじゃないよ!」

頭で考えるより先に口が動いた。

桜井くんは当たり前のことをしただけ、言っただけ。

なのに、みんなに頭下げて…。

謝るのは桜井くんじゃないのに。


「私が内村さんに火をつけちゃったんだから、桜井くんが謝ることないんだよ」

桜井くんに近づいて、そっと腕に触れた。

「ごめんね、私がいけないんだよ」

もう1度、桜井くんに謝る。


「ゆず先輩はなんも悪くないです。あいつが…あいつが…!」

「もういいから。練習戻ろ。ね」

桜井くんの腕をポンと叩いて笑ってみせた。