「ゆず、高遠取られちゃうんじゃねぇ?可愛い高遠の後輩マネに」
面白半分にからかってくる新3年部員たち。
(好き放題言って…!)
ワナワナ震える手を握りしめて、言い返そうとした時。
「取られませんよ、絶対」
高遠くんが静かに言った。
「たしかに翔先輩、前から全然相手にしてなかったですよね」
相川くんが少し安心したように言う。
「でも、あの積極さはハンパないからなぁ。誰も止められない猪突猛進女なんです。だから、俺あんま一緒の部活は嫌なんですけど」
桜井くんが言葉通り嫌そうな顔をする。
それにしても
こんな前評判の悪い子っているの?
話聞くだけで普通にアウトでしょ。
(…でも、誇大表現されてるだけでそんなでもなかったりするのかなぁ)
あまりに不憫に思えて、考え方を改めてみる。
でもそれが全く必要なかったどころか、かなり斜め上を行く強敵だということを、新入生仮入部初日に知ることになった。