『ほんとだよ。だって先輩と付き合えただけで奇跡なのに、合宿から帰ってきた早々デートできるなんて、そりゃ浮かれるでしょ』
高遠くんはいつも落ち着いてて、浮かれちゃうのとか私だけかと思ってた。
高遠くんでも浮かれちゃったりするんだぁ。
(顔に出ないから全然わかんないよ)
『明日からはどんな予定なの?』
「美瑛とか富良野とか、あと札幌でしょ?それから小樽と、最後が函館。函館の夜景が楽しみだよー。写メ送るね」
『うん。楽しみにしてる』
話せば話すほど会いたくなっちゃうな。
まだ修学旅行初日なのに。
まだあと5日も残ってるのに。
「高遠くん」
『うん?』
「浮気しないでね」
ガタンッ。
電話の向こうで大きな音がした。
『はぁ!?するわけないだろ』
(あ、男言葉)
高遠くんが私に男言葉使うなんて、ものすごく珍しい。
『先輩ってたまに、急に突拍子もないこと言い出すよね』
高遠くんが電話越しにため息をついた。
「だって不安なんだもん」
いつも一緒にいたって不安なんだよ。
また、いつ内村さんみたいな子が出てくるかわかんないし。
内村さんのあの1件以来、不安なんだよ。