『あんまりハメ外しすぎないようにね、色々と』
空港から高遠くんに電話をかけた。
昨日の部活帰りにそう約束したから。
私と電話するために、高遠くんは早めに学校に着いててくれた。
電話から聞こえてくる高遠くんの声は穏やかで、この声が1週間近く聞けないと思うと、寂しく胸がきゅうっとなった。
「うん。高遠くん部活頑張ってね。ケガしないようにね」
『1週間後には3年のレギュラーの座、危ないかもよ』
高遠くんが冗談っぽく笑う。
「1週間で1.2年生すごい成長しちゃうんだ?」
『そうそう。だから楽しみにしててよ』
「わかった。3年のみんなにそう言っとく」
2人で笑った。
『そろそろみんなのとこ行かなきゃでしょ?』
近くの時計を見ると、集合時間15分前。
「そうだね。じゃあそろそろ行く」
『先輩、ほんとにあの人気を付けてね。”よーへーくん”』
冗談交じりな言い方だけど、きっと冗談じゃないんだろうな。
洋平くんはそんなんじゃないんだけどなぁホントに。
だいたい私、高遠くんみたいにモテないし心配しなくていいのに。
「友達として普通に絡むから心配しなくて大丈夫だよ。じゃあ行ってくるね」
『うん』
ほんのちょっとの沈黙の後
『先輩、好きだよ』
切なそうな高遠くんの声に胸が締め付けられる。
「私も好きだよ、翔」
一瞬のうちに意を決して、名前を呼んだ。
そして
「じゃ、行ってくるね!」
って急いで電話を切った。
自分でもわかる。
きっと私、顔真っ赤。
正面切って名前でなんか呼べないから。
高遠くんには言わないけど、6日間離れてるの寂しいから。
だから名前で呼んだ。
私の気持ち、わかってくれるかな…。