春休み初日の部活はちょっとドキドキ。
それは、一緒に学校に向かう高遠くんにもバレてるようで。
「先輩、緊張してる?どしたの?」
「今日から相川くんと桜井くんが合流するかと思ったらなんか緊張しちゃって」
高遠くんがふっと笑う。
「何でそんなに小心者かな。たかがガキが2人来るだけじゃん。堂々としてないとナメてかかるよ、あいつら」
「やっぱ新入生が来るって緊張するよー。去年もそうだったもん」
去年は高遠くんが入部してきたから余計に緊張した。
今でもあの入学式の日のこと、覚えてる。
「入学式の日、興味本位で渡り廊下から新入生を見てたの。その時、高遠くんを見つけてね」
「うん。俺も先輩見つけた時、息止まるかと思った」
「…え?」
たしかにあの時、高遠くんと目が合った。
数秒間、お互い見つめ合った。
「だってまさか校門入ってすぐに見つけられるなんて思ってなかったし。なのに、まさかの校門くぐって最初に目に入ったのが柚香先輩とか」
高遠くんが”くはっ”と吹き出した。
「すぐ私ってわかったの?」
「もちろん。どんだけ憧れてたと思ってんの?」
だって…
「中学の大会の時だって、スタンドからじゃ顔とかよくわかんないでしょ?」
「先輩だって入学式の日、俺のことすぐわかったじゃん」
あ…そっか。
衝撃的なくらい目に焼き付いてた高遠くんの姿。
スパイクを打つフォームも、そしてその綺麗な顔も全部私の目に焼き付いてた。
「…私と同じなんだ」
「同じだよ」
嬉しいような、くすぐったいような、不思議な感じ。
私と同じように高遠くんも私の姿を目に焼き付けてくれてたんだ。