「知っているわよ」

 知っているわよの後に出た言葉に驚かされる。

「え? 人間をダマす悪い女? なーに、それ?」

 ニヤリと笑みを見せて私の所へ歩み寄って来た黒木さん。
 私の肩の後ろに手をやり、顔を近づけてささやくように言う。

「神奈木さんったら、千聖が言った事を真に受けるの?」
「真に受けるって?」
「このコが説明した事、信じるワケ?」
「友達の言った事だから…」
「信じるよねフツーって言いたいのね?」
「うん、まあ」
「それって変」
「変? 信じるな…って事?」

 クスクスと笑う黒木さん。
 近くのテーブルに背中から寄り掛かり、腕を組んで説明を始めた。