「今日は、せっかくのデートなのに、一段と顔色が悪いね~
ハンサムな顔が台無しじゃないか。

薬は飲んだかい?」


サチはさりげなくいつも海人の心配をしている。


「はい、もう少しすれば効いてくると思うので、大丈夫です」


海人はサチに心配をかけまいと、わざと腕に力こぶを作って見せた。
サチはゲラゲラ笑い「後で、浴衣を取りにおいで」と言って、去って行った。


そして、その場に誰も居なくなると、一気に虚しさが襲ってきた。
痛み、虚しさ、不安・・・
海人は、毎日、その恐怖の底なし沼に落ちないように必死に足を踏ん張っている、そんな気分だった。


でも、今日は、ひまわりと花火を見に行く。
海人は頭の痛みを必死に堪えながら、その日の仕事をしっかりと片づけた。