僕らは進む、青空の下

コントのようなやりとりに、

周りにいた客がじっとこっちを見ていた

恥ずかしくなって口を噤む


そして暫く、男子二人の奇妙な買い物は続いた───
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翌日、綺麗に包装されたプレゼントを抱えて、

学校へ向かって走っていた


早く前川に渡したい!

あまりにも夢中で走っていたら

ガッ

「うおっ!?」

コンクリートの割れ目に躓いた


え、何かプレゼントから嫌な音が……

……壊れてたら謝ればいいか!


そしてまた、学校へ向かって走り出した
楽器庫へ入ると前川が楽器の準備をしていた

「前川っ!」

そう声をかけると、

前川は何故か気まずそうな顔をし、

「真太郎先輩、ちょっと話があります」

小さな声で俯きがちに言った


今日も合唱部は休みらしく、

別の音楽室で二人で向かい合った
気まずい沈黙が流れている

……この空気は嫌いだ

「前川っ、遅れてごめんな!プレゼント...「真太郎先輩」

俺の言葉を前川が遮った

「どうした?」

少し砕けたイントネーションで返す

前川は意を決したように告げた


「真太郎先輩、別れて下さい」
…………は?

笑顔が引き攣っていく

「な、なな何でいきなり……」

驚きのあまり吃りまくる

「私昨日、帰る途中で変な男の人達に絡まれて、

どうしようかと思ってたら聖於実先輩が助けてくれたんです」

「……それとこれと、どういう関係が……?」
「私、聖於実先輩に…………初めての恋をしたんです」

……え、じゃあ俺は何だったの?


「今までの15年間、恋をした事がなくて、

私はきっと、恋する事に恋してたんです

告白してくれた人を好きになろうって、酷い事思ってたんです

……だから先輩、別れましょう」
前川は深く礼をすると、

「あ、今度の彼女さんは、付き合ってすぐ、

誕生日を聞いといて下さいね?」

その言葉を残して、音楽室から去って行った


暫く呆然としていると、音楽室の扉がガチャッと開き、

奏人が入ってきた

「奏人……俺、フラれた……」

口を開けて固まる奏人


ふとプレゼントを開けてみると、さっき転けた衝撃で物が幾つか粉砕していた

これじゃ返品もできないなぁ

俺の小遣いがぁ……
「ドンマぃ(私は気にしない)……あ、違った

Shake it off!(気にするな)」

「そのちょっとした豆知識みたいなの要らないよ……余計へこむから」


「……まあ、次に期待しようぜ!

そんなに元気ないとお前らしくないし」

俺らしくない……か

この状態で練習すると泉先生に何か言われそうだな

事情なんて話したらめちゃくちゃ気まずいし
よし!

「奏人!練習終わったら俺を励ます会やってくれ!!」

「(可哀想だし……)おう!」


小遣いは減って、前川とも別れたが

Don't mind!


俺の本気を、聖於実先輩に見せてやる!

前川に少しだけでも後悔させてやる!


部長だからどうした!俺は聖於実先輩を越えてやる!!



end