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入退場でのBGM演奏はあっという間に、本当にあっという間に終わり、
気が付けばもう、仮入部期間が始まっていた
今年は何人が入ってくれるだろうか
音楽室で全体練習をしていると……
新入生達が緊張した面持ちで、恐る恐る音楽室へ入ってきた
1…2…3………
ざっと数えて16人だ
20人に満たないのは少し痛手だが、まあ、こんなにも入ってくれる人がいるわけだし
そう思い、楽器を構えたその時
音楽室に足を踏み入れる影がもう一つあった
顔を見ようと首を動かした瞬間
時が止まったような感覚に陥った
緩くウェーブのかかった色素の薄い髪と
垂れ目がちの大きな目
トランペットという、扉から遠い位置だが、
ひと目で顔の整った子だと分かった
……一目惚れ、というやつだ
心臓が大きく脈打っている
今まで恋をした事がないわけではない
彼女だっていた事はある
だが告白したのはあっちだったし
好きな人に告白をするなんて、チキン過ぎて出来なかった
でも、もう俺は……
チキンを卒業すると決めた!!
来年には恋なんてしてられないだろうし、
高2なんてもうほぼ大人だ
だから今年こそは……
自分から告白して、彼女をつくってやる!!
そうして一人で夢を語っていると
「真太郎!! 集中しなさい!」
当然の如く、泉先生に怒られるのだった───
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あれからまた数日が過ぎ
今日は一年生の正式入部の日
仮入部期間中に、
彼女の名前は前川ミコだという事が分かった
そして今、目の前の一年生達の中にいる前川
彼女も吹部に入ったのだった
よし、一歩進展したぞ
自分が何かをしたわけではないが、
同じ部活という距離に縮まった事に
内心ガッツポーズをしていた───
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泉先生の元、楽器選択が行われたようで、
前川はフルートになった
トランペットとフルート──最も遠い位置関係だが、
こんな遠距離恋愛もありだよな!な!?
全パートfかff
=投げ遣りな真太郎の心情
俺は絶対チキンを卒業するんだ!
フラれたっていい
取り敢えず、当たって砕けろだぜ!
いや、砕けちゃ困るが……まあいいや!
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数日後、前川が入部してまだ一週間も建っていないが、
勇気を振り絞って初めての告白をした
前川はすごく驚いていたが、
最後には「はい」と言ってくれた
その答えを聞いた刹那
嬉し過ぎて思わず、飛び上がりそうになった
(↑最後のはねる感じ)
前川と付き合い始めて数日後のある日
部長でありテナーサックス担当の聖於実(マサオミ)先輩に、
新入生歓迎会を二週間後に行うと告げられた
この高校は、他の高校と違って、吹部内で歓迎会が行われるのだ
泉先生曰く、一つの部活として絆を深めてもらいたいそう
そして今は、学年ごとの出し物について、
各学年ごと集まって話し合っているのだが……
「歌やりたい!」
「劇でもやる?」
「何か演奏したい」
「えー、やだ」
「……じゃあどーすんだよ?」
色々と案を出す人、何故か全てを嫌がる人、それに若干キレ気味の人に分かれてしまった
毎回の恒例行事というべきか、
入部してから何度目かの二学年のケンカが始まった
俺は窓の外を眺めながら小さく溜め息を零す
そしてまた
「真太郎やる気あるの?」
怒られるわけだった───
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暫く揉めた末、結局は演奏をする事になり、
あんなにケンカをさせてくれた新入生歓迎会も、あっという間に終わってしまうのだった───