降りると目の前にあるのは、
一度つけて来たことがあるマンションだった。

あの時は、課長と梨々花ちゃんの関係を勘違いして
つけてしまったのだ。
今考えると恥ずかしい限りだわ。

「おい、尾野。どうした?行くぞ?」
そう言うと課長が私の名を呼ぶ。

「は、はい。待って下さい」
慌てて駆け寄る。
吐いて少し寝たせいか酔いが覚めてきた。

エレベーターに乗り上がって行く。
そして部屋に案内された。
心臓がドキドキと高鳴ってうるさい。
いよいよ……なのね。

玄関に上がり電気をつけてくれる。
「お邪魔します……」

リビングの方に行くと
きちんと整理されているシンプルなリビングだった。

「あれ?梨々花ちゃんは?」
そう言えば勢いで返事をしたのは、いいが
梨々花ちゃんが居たら気まずい。

「預かったのは、昨日までだ。
今日は、母親が帰って来るからあちらに
戻って行った」
素っ気なく答えると課長は、キッチンの方に行く。

あぁ、そうか。
梨々花ちゃんは、課長の元奥さんが引き取ったんだっけ。
一緒に居ることが多いからすっかり忘れていた。
じゃあ……今は、課長と2人きり。

「…………。」
改めて自覚すると緊張をしてくる。
心臓がドキドキして落ちかない。